認知行動療法(CBT)

コラム法

認知行動療法とは、認知(物事の捉え方)・行動・感情の密接なつながりに注目する心理療法です。認知・行動を変えることによって、不安や憂うつなどつらい感情を軽減したりなくしたりすることを目指します。
英語のCognitive Behavior Therapyの頭文字をとりCBTともよばれます。

知名度・有効性ともに高い心理療法であり、心理学に詳しくなくても認知行動療法の名前は聞いたことがあるという方も少なくないでしょう。

たとえば、不安が強いAさんは「仕事でひとつミスをした」という出来事に対して「いつも失敗している」「何をやってもうまくできない」と捉え(認知)、自責や不安の気持ち(感情)を抱くことがあります。会社も休みがちになってしまい(行動)、そのことによってさらに自責の念や焦燥感(感情)に苦しめられています。

しかし、人は誰しもミスをしますし、ひとつミスをしたからといってその他のすべてがだめということは全くありません。一歩立ち止まって考えれば、Aさんの捉え方は客観性・妥当性にかけた極端な捉え方(認知)だといえます。

CBT


同じ「ひとつミスをした」という出来事に対して、「ミスをすることもあるが、うまくいくこともある」「今回ミスをしたからといって、これからミスをし続けるとは限らない」というバランスのとれた捉え方(認知)をすることができればつらい気持ちは生まれにくくなります。また、「会社を休みがち」という行動面も「ミスをしないように対策する」というように変化すれば、一層つらい気持ちになるような悪循環は生まれにくくなります。

このように、今までの人生の中で培われてきた自分の認知や行動を変えることにより、つらい感情が起こる悪循環を断ち切り、生きづらさを解消することを認知行動療法では目指します。

認知行動療法の対象は?

うつ病、パニック障害、強迫性障害、不安などに高い効果があるといわれています。薬物療法と同等かそれ以上の効果があるとの研究結果もあります。

認知行動療法の特徴

認知行動療法の主な特徴として以下の2点があげられます。
①過去よりも現在に焦点をあてる
②ホームワークが課される

トラウマなどの過去の体験を乗り越えようとするのではなく、今の認知・行動を変えることでつらい気持ちを改善しようとします。
クライエントが主体となり、ホームワークをカウンセラーの助けをかりながら続けていくことで、認知・行動の変容を目指します。

認知行動療法の種類

漸進的筋弛緩法や呼吸法、コラム法など様々な種類があります。

認知行動療法はセルフでできる? 簡単?

認知行動療法の高い知名度・人気の背景には、ひとりでもおこなえるという点があげられます。この点からすれば簡単ということができるでしょう。近年は認知行動療法に関する市販の書籍やWEBサイトが多く、中には書き込みができるワークブック形式の書籍もあります。もちろん専門家のアドバイスのもとおこなう方が、安全かつ効果が高いと思いますが、書籍を読み、内容をよく理解し、継続しておこなうことができる方は、まずはひとりでやってみてもよいと思います。

認知行動療法のやり方

認知行動療法は書籍などを読み、ひとりで進めていくことも可能ではありますが、ここではカウンセリングを有効に活用した認知行動療法の流れの一例をご説明します(詳細はクライエントの状態やカウンセラーにより異なります)。

初回カウンセリング
現在のお悩みや、改善したいことなどをカウンセラーがお聞きし、クライエントに合う認知行動療法を提案します。問題を明確化し、カウンセリングに来る頻度(週1~月1回など)やホームワーク、目標などを決めます。今回はコラム法を選択したこととします。
カウンセリング
ホームワークの実施(コラム法)
ホームワークを次回カウンセリングまで実践します。今回のコラム法では、つらい気持ちが起こった出来事について、状況・気分・自動思考をメモします。
(例)
状況:  月曜17時 エクセルの入力ミスをして上司に叱られた
気分:  悲しい50% 怒り50%
自動思考:上司は私のことが嫌いだ 上司は私に八つ当たりをしている 自分は何をやってもダメだ
カウンセリング
自宅で行っていただいたホームワークをもとにカウンセラーがお話しをし、認知の偏りに気づくことを手助けします。
カウンセリング
カウンセラー

一つのミスに対して「自分は何をやってもダメだ」と思うのは、ご自身を責めすぎではないでしょうか

クライエント

確かにそうかもしれません。また、「上司が私のことが嫌い」というのも冷静に考えると少し違う気がしました

カウンセラー

おっしゃるとおり、他のエピソードをうかがうとすこし客観性にかけるかもしれませんね

ホームワークの実施
カウンセラーの助言をもとに、ホームワークを進めていきます。コラム法では状況・気分・自動思考のメモになれてきたら、根拠・反証・バランス思考の記述を増やすなどホームワークの種類を適切にかえ、治療効果を高めます。
(例)
状況:    水曜15時 勤務記録の入力ミスをして上司に叱られた
気分:    悲しい60% 怒り40%
自動思考:  上司は私のことが嫌い 上司は私に八つ当たりをしている 自分は何をやってもダメだ
根拠:    先週も怒られた 上司はいつも自分ばかりに指摘をしてくる 仕事がすすまない
反証:    褒められるときもある 他の人にも怒っている 仕事は同期と比べて速いといわれた
バランス思考:上司は自分に期待して、良く面倒をみてくれ、色々と教えてくれるのではないか
       上司はいそがしいので嫌いなわけではないけど、言い方が多少荒くなることもあるのではないか
気分:    怒り10%

コラム法7つ
カウンセリング
自分ひとりでは多様な捉え方ができなかったり、どのような捉え方をすることが妥当なのかが思いつかないときなどに、カウンセラーのことばが役立ちます。また、ひとりではなかなかワークを継続させることができない方にとって、カウンセラーにワークを見せることは継続のモチベーションになります。
カウンセリング
クライエント

反証が思い浮かびません

カウンセラー

このように考えてみることもできませんか?

カウンセリング終結
上記のような流れでカウンセリングとホームワークを続けていきます。お悩みの解決具合や、カウンセラーとの相談でカウンセリングの終了時期を決めます。

認知行動療法のポイント1

コラム法ではワークという形で、自分自身の心理的課題に取り組んだ記録が残ります
記録を振り返ることで、しっかりと自分自身の課題に向き合ったこと自体が自信になったり、「今となっては小さなことで悩んでいたな」「今悩んでいることもいつかは小さなことになるのかもしれない」と自分を客観視する手助けになったりします。

認知行動療法のポイント2

認知行動療法(CBT)はクライエントが主体的に取り組む必要があり、適切に継続することが難しいですが、一度習慣化させられれば、カウンセリング終了後も心を健康に保つスキルとして、生活に役立てていただくことができます。

当室では、どのカウンセラーでも認知行動療法をお受けいただけます(クライエントの状態により、認知行動療法以外のご提案をさせていただくこともございます)。特定の認知行動療法をおこなってみたいという方はお問い合わせからご確認いただくか、担当カウンセラーにお気軽にお申し付けください。